後始末はちゃんとしましょう。

連休初日の土曜日、旧作レンタル50円セールも相まって、アホ程忙しかった。
棚卸が全く進まない。
2月中に終わるんやろうか?

オープン前に夜間ボックスに帰って来てたDVDの返却処理を行う。

アダルトDVDも大量。
このアダルトDVDの返却処理をしてて時々あるのが、ケースの中にアンダーヘアが混ざり込んでるパターン。
アンダーヘアと書くとなんか綺麗やけど、そうまさしく〝陰毛〟がディスクにくっついてたりする。

「ウゲェっ💦💦」となるわけです。

この仕事長いので、別にもの凄いグロいDVD借りようが、彼女とイチャイチャしながら借りに来ようが、アナルセックスだ、スカトロだ、と色々あるけどもう別に驚きもしない。
個人の嗜好やし。
全くもって自由。
どんな風に使ってもらっても結構。
商品さえ傷まなければ。
「当店のレンタル商品をご利用頂き有難うございます。お役に立てましたでしょうか?」くらいの気持ちよ。
一人寂しい夜長のお供に当店のDVDを。
彼女との熱い夜の前に、気持ち上げる為に当店のDVDを。
叶えられない欲望を、奥さんの目を盗んで映像の中の彼女にぶつける為に当店のDVDを。

もうなんでもええわ。
あたしら、そのお金でお給料もらってんのやし。
けどよ、けんどもよ。
後始末はちゃんとしよーぜ。

何故に陰毛がディスクにくっつく訳?
手拭いてへんの?
ディスクにくっついてるとか、ケースに紛れ込んでるとかならまだいいのよ。
吹けば飛ぶから。
たまにディスクをケースにカチッとはめる真ん中に挟まってる時あんのよ。
触らな取れへんやんっ!
ほんで千切れたりすんねん。
勘弁してぇ~。
さぁ、今日も一日お仕事頑張るぞっと、思ってるのにガクッて来るねん。
ディスク、カチッとはめる前に手拭けよっ!ったく。

今の場所に新築移転してオープンするまでは、個人商店の色がまだ残ってて、やたらアダルト雑誌の品揃えが充実してるお店で。
毎日毎日、DVD付きの雑誌のシュリンク(ビニールで密閉する作業)するんやけど、これが今と違って〝これでもかっ〟と過激な表紙で。
バイト入って初めてシュリンク作業した時はドギマギした。
「え~っ、こんな凄い表紙、みんなよく平気な顔して作業出来るなぁ…。」ってチラチラ先輩バイトの顔見てたもん。
けど、人間慣れるもんですわ。
一週間も経てば、笑いながら作業出来るようになったわ。
「70歳の痴女とか、ゲイの緊縛プレイとか、こんなん何処に需要あんねんろ~?(笑)」
しかし売れるのだ。こういう雑誌。
世の中色んな需要と供給があるのである。

その需要の中でもとんでもない需要があった。

朝、オープンと同時に70代くらいのお爺さんから電話があった。
「バディ(老舗のゲイ雑誌)の今月号もう出たか?」
「はい。今日発売日です。」
「ほな今から行くさかい、取っといてーな。」
「はい。お名前教えて…」
ガチャン。
かかり過ぎやって!ほんなに欲しいんか。

20分後、お爺さんがやって来た。
「え…?え…?この顔もしかして…。」
小学校5,6年の時の学年主任のO先生や!
当時からあたし達から見ると、もうお爺さんみたいな先生だった。
長い事喋ってると、口の端にツバが溜まる。
今目の前に居るお爺さんの口の端にもツバが…。
間違いない。O先生や。
O先生「店来る前に財布見たらお金が足らんかったさかい、お金降ろしに行ってたで、遅うなってしもてんわ。」
あたし「わざわざ有難うございます…。」
先生、O先生~。
なんか、あたし、堪らなく今切ないです。
何なんでしょう?この感情?

でも、先生が取り置きを頼んで来た雑誌が、ロリコン雑誌やなかったのが、まだ幸いやったと自分を慰めたあの日。

先生、O先生。
バディは昨年末、25年の歴史に幕を降ろしました。
残るはサムスンだけです。
でも当店では取り扱いがございません。
念の為。