アニー=安子の違和感。

毎日毎日楽しみに見ていたNHKの朝ドラ『カムカムエブリバディ』が最終回を迎えた。

朝ドラ史上初の3人のヒロインによる100年の物語。

最初、ヒロインが3人でリレー形式で演じると知った時、「ええ~。それってどうなん?」と、初の試みに対する不安を感じてたけれど、なんのなんのこれがスピード感があって、ダレる事無く一気に突っ走って、見てて本当に飽きなかった。
楽しかった。

3人のヒロイン、上白石萌音ちゃん、深津絵里さん、川栄李奈ちゃんは、3人共見事な演技力。

上白石萌音ちゃんは、このドラマが始まるまでは苦手だったけれど、戦時中の苦しい生活の中で、必死に生き抜く安子を見事に演じてて、見直すきっかけになった。

あんなにモンペ姿が違和感無く似合って、戦時中の雰囲気を自然にまとえる女優さんはそう居ない。

今日の最終回は、涙涙の感動のラストになるのかと思いきや、伏線の怒濤の回収回収で、「ええーっ!そことそこがくっつく?」とか、「やっぱりそう来たか!」とか、ここまで畳み掛けられると、むしろ楽しくスッキリした。

それにしても、今日の情報量の多さは凄かったなぁ~。

ここ最近ずっと気になってた、チョロチョロ映り込む戦火で焼け落ちた安子の実家の和菓子屋〝たちばな〟のおはぎは、一体誰が再建してるのか問題も、安子のお父さんからおはぎを盗んだ戦争孤児の男の子だったと明かされて、「やっぱり」の納得感と感動と。

安子の親友だったきぬちゃんはどうしてるのか問題も、きぬちゃんそっくりの孫(小野花梨が二役)が登場して、近況を教えてくれる。

しかも、このきぬちゃんの孫の花菜に、るいの息子の桃太郎が一目惚れして、後に結婚すると言うオマケ付き。

桃太郎はほぼ2秒で花菜ちゃんに一目惚れして、結婚までこぎ着けた。

恐ろしき15分ドラマの時間の流れ。

結婚と言えば、モモケンと女優のすみれさんの結婚も、もう笑ってしまった。

ひなたの初恋の相手、ビリーが城田優でウィリアム・ローレンスで…と、視聴者が考察して「こうなのか?」と思ってた事が、ピシピシッとパズルのピースがはまって行くが如く、次々明かされる答え合わせの気持ち良さ。

そう、『カムカムエブリバディ』は、見てて楽しく爽快な朝ドラだった。

ひなた編で、近所の酒屋のおじさん役でおいでやす小田さんが出てたのも、楽しかった事の一つ。

最初出て来た時は、「もうそのまんま、おいでやす小田さんやん。」と思ってたけれど、回を重ねるにつれ(結構出番が多かった。)、「こういう人商店街に居る居る!」と思えて、なかなか良かった。

これをきっかけに、これからもドラマ出演のオファーがどんどん来そうなおいでやす小田さんなのである。

ところであたしには、一つだけどうしても納得いかなくてスッキリしない事が。

それは最終盤に視聴者の誰もが気になっていた、「アニー・ヒラカワは果たして安子なのか?」問題。

と言っても、ドラマの中で思わせぶりなヒントが幾つも散りばめられていて、例えば日本に来るのは初めてと言いながら、甥っ子に「本当に岡山に帰らなくてもいいの?」と言われていたり、ひなたがラジオ講座で英語を学んだと話したら、「まだあのラジオ講座やってるの?」と言ってしまったり、餡こを噛みしめる様に口にしたり…。

「アニー・ヒラカワは安子ですよ。」のヒントがこれだけ揃えば、そりゃあもう安子でしょうよ。

でもでも、上白石萌音ちゃん演じる若かりし頃の安子と、森山良子さん演じる現在の安子がどうしてもイメージが違い過ぎて繋がらないのだ。

『カムカムエブリバディ』では、本人とその子供や孫の役を一人二役で演じる登場人物が多くて、それがまた面白さと温かさを生み出してて、いいアクセントになっていた。

主要人物で若い頃と現在の姿を、役者を変えて演じてるのは、安子の義理の弟になった雉間勇役を村上虹郎から目黒佑樹へ。
雉間家の女中だった雪衣役を、岡田結実から多岐川裕美へ。

でも、この二人は醸し出す雰囲気が良く似てて、上手いことキャスティングしたなと思った。

でも、あの戦時中の安子の田舎っぽさ、純真さ、ひたむきさ、素朴さが、後年のアニー・ヒラカワには全く感じられ無いのだ。

お洒落なグレープヘアのショートカット。

粋なフレームの眼鏡に耳には上品なイヤリング。

真っ赤なコートを颯爽と着こなし、指には真っ赤なマニキュア。

おばあさんと言うより、キャリアマダムとでも言いたくなるような、洗練されたアニー・ヒラカワ。

森山良子さんの演技が悪い訳では無い。

演出側が意図して、ああいうスタイルになったんだろうから。

でもでも、でもなぁ…。

なんか、繋がらへんのよなぁ。

楽しかっただけに、結構肝になるこの一点の違和感が、残念に思えてならないあたしなのでありました。