雅子様の羽根

令和元年11月10日(日)
天皇陛下御即位に伴う
『祝賀御列の儀(祝賀パレード)』
日曜日に晴れるのは三ヶ月振りという東京の青空の下、無事滞りなく執り行われた。

私は10月22日の即位の礼も、祝賀パレードも、一日出掛けていてリアルタイムでは見れなかった。

でも、ニュース映像で見る天皇陛下皇后陛下の晴れやかで美しいお姿は、テレビ画面を通して見ているだけのこちら側の気持ちをも、明るく温かく照らして下さる…。
そんな素晴らしいパレードだった。

外務省に勤務し、カチッとしたジャケットにスカート、スカーフを巻いてボブヘアを風に揺らしながら、ハイヒールで颯爽と歩く小和田雅子さんが、皇太子妃候補としてクローズアップされたのは、平成3年頃か。

マスコミがこぞって小和田雅子さんを取り上げる。

米国国務長官竹下登首相との会談の通訳をされてた時の映像を見た時は、本当にトップレベルの日本のキャリアウーマンが、皇太子様のお妃候補なのか。
と、その新しさに軽い衝撃を受けた。

でも、追いすがるマスコミの記者を振り払う様に、かなりの早足でハイヒールでカッカッと歩く雅子さんの姿はどこまでも格好良く、この女性が果たして自分のキャリアを捨てて、皇室に入るだろうか?
と、その可能性はかなり低いのでは無いかと思いながら、当時の騒動を見つめていた。

皇太子様のお妃選びは長年に渡り、水面下でずっと行われている事を、日本の国民なら誰もが知っている状況で、何人かのお妃候補の女性の名前が上がっては消え、上がっては消えるのを見ているうちに、「皇太子様どうされるのだろう?」と、心配にも似た気持ちが自分の中に生まれて来る。

そして、どうやら皇太子様の本命が雅子さんである事を国民全員が知る様になるのだ。

私自身も皇室日記や皇室ニュース、その時間家に居れば必ずチャンネルを合わせていた。
テレビを通して知る皇室の方のお姿は、私達国民なんかより遙かに質素倹約で、数え切れない程の季節や暦に合わせた儀式を粛々と執り行われる〝静〟のイメージ。

〝静〟は〝清〟にも〝聖〟にも通じていて、そこに〝動〟のイメージの小和田雅子さんが自ら進んで入られる事は無いだろうと、私は勝手に決め付けていた。

せっかく一生を賭ける仕事に就いているのだ。
幾ら皇太子様が思いやりに溢れ素晴らしいお人柄でも、外務省から皇室へはギャップが有り過ぎる…。

でも、皇太子様は諦めにはならなかった。

「雅子さんの事は僕が一生をかけてお守りしますから。」

皇太子妃に小和田雅子さんが決定!の驚きのニュースと共に、この言葉で雅子さんを口説き落とした(!)皇太子様の男気に無茶苦茶感動して、
「凄い!皇太子様本当に良かった!」
と、自分の友達の結婚が決まった様な気持ちで、とにかく感動して興奮したあの当時を懐かしく思い出す。

そして婚約会見での雅子様

f:id:mr-5160-hate:20191112122041j:plain

いかにもな皇室ファッションのテイストのレモンイエローのワンピースをお召しになった雅子様

私はこのお姿の雅子様を拝見した時、ハッキリとガッカリしたのを覚えている。

失礼ながら、しっかりとした骨格の雅子様は、だからこそキャリアウーマン風のジャケットやスーツ姿が素晴らしく格好良かった。
ハイヒールで颯爽と歩かれる姿は、それこそがこれからの平成の時代の皇室の新しい風の様で、憧れの気持ちを持って拝見していた。

でも婚約会見でのワンピースは、雅子様が自ら発注なさったのではあるまい。(当然と言えば当然だが。)

外務省時代自由に羽ばたいていた雅子様の伸びやかな羽根を、皇室という窮屈な世界に合わせてパタパタと畳んだみたいで、皇太子妃として始まる日々が、ものすごく大変なものになる予感がひしひしとした。

今までマスコミの前で多くを語る事は遠慮なさって来ただろう雅子様は、婚約会見では早口で自分の思いの丈をとても多弁に語られた。
その雅子様の姿を、予想されてなかったのか、皇太子様は少しびっくりした様なお顔をほんの少しだけされた。
そしてすぐ、にこやかな温かい目を向けられた。

「私が全力で雅子さんの事はお守りしますから。」

それを国民が初めて実感する会見となった。

皇太子妃となられてからの雅子様のご苦労、不安、お世継ぎへのプレッシャー、激務。
今から改めて書かずとも、国民の皆が知っている。

だからこそ、祝賀パレードでの皇后雅子様の健やかで穏やかな笑顔がずっと見られた事が本当に嬉しかった。

色んな人と「雅子様お元気になられて良かった。」と言葉を交わした。

天皇陛下皇后陛下のこれからを祝福して、まるで照明が当たっているかの様な陽射しがお二人に当たって、神様がお祝いされてる様だった。

皇后陛下になられてからの雅子様は、諸外国の要人との会談を、通訳無しでこなされて、その語学力、振る舞いが世界から賞賛を浴びていると言う。

それもまた嬉しい事の一つだ。

何十年も自分のキャリアや特性を皇室の中では必要とされる機会が余りに無くて、きっと自分の存在意義に悩まれたに違い無い雅子様が、皇后陛下になられて培って来られたものを、自然と発揮なされる様は、ずっと心配して見守って来た私達に、今度は誇らしさを与えて下さる。

パレードでそっとハンカチで目元を拭われる姿を見る度に、私も何とも言えない感極まるものが湧いて来た。

天皇陛下に温かく見守られながら、ゆっくりとでいい。
皇后陛下がたおやかにその美しい羽根を広げられる日が来ることを。
祈っている国民がここにも居ます。