だって、現地の言葉が分からない。

あたしは写真撮られるのが大の苦手。
だって写真って残酷。
自分のコンプレックスをまざまざと見せつけられて、「ハァー、他人にはこういう風に映ってるんや…。」って画像見る度に気持ちが下がる。
今日び、いくらでもシミを消したり、目を大きくしたり、なんぼでも加工出来るやん。って言われるけど、加工してまで撮ろうとは思わへんのよなぁ…。
それに、加工も善し悪し。
だって初めて劇場で祇園見た時の木﨑君の印象
「ヒゲ濃っっ!Twitterの写真と全然ちゃうやん!」
「ここまで来たら軽い詐欺罪やで。」
やったもん。
あたしの中で〝ナルシスト王子〟から〝顔の濃いやたら動く奴〟に変わったもん。

ま、木﨑君の話はどーでもええわ。

あたしも若い頃は写真一杯撮ってた。
この前、大量の昔の写真の整理をしてて、バリ島旅行の写真を見つけた。

色白スレンダー美女のすーちんと出掛けたバリ島旅行。

当時のあたしは、今より太っていてピチピチというよりはむっちむっち。

当時流行っていたワンショルダーの赤色のワンピースの水着を新調して、ルンルン気分でバリ島へ旅立った。

バリ島で宿泊したホテルは、そんなに無茶苦茶高いホテルじゃなかったけど、二十歳過ぎの若いあたし達には十分贅沢なリゾートホテルだった。
そのホテルのツアー企画のシュノーケリングがバリ島旅行のメインイベント。

マイクロバスでビーチまで送ってもらうと、インストラクターの現地の男の人が待っていた。

肌色の水着姿で。

うん?でもなんか違う。
よく見ると、それは水着ではなくてただの下着のパンツやった。

「え?それって水着ちゃうやんな?」
「それってただの肌色のパンツちゃうん?」
あたしは心の中でツッコんだ。
だって現地の言葉が分からない。
あたしよりも天然で純真なすーちんは、何の疑問も抱いてない。
まあ、リゾート地と言ってもまだまだ田舎。こんなもんか…。
なんとなく自分を納得させた。

背の高いシュッとしたインストラクターと、クセ毛で背の低いインストラクターの二人。
その二人とあたし達二人。
四人で小さなボートに乗って海に繰り出した。

海は信じられないくらい綺麗やった。
透明ってこういう色を言うんや!ってくらいの透明度。
ボートの上からでも泳いでる魚が見える。
リアル ファイディングニモの世界。
シュノーケルと足ひれを装着して、透明な海へダイブした。

あたしのパートナーは、クセ毛の小っちゃいインストラクター。

でもこのクセ毛インストラクター、なんだかやけにくっついて来る。

「いやいや、あたし泳ぎは得意やからそんなに心配してくれんでも遠浅やし全然大丈夫やで。」
そう言いたいけど、現地の言葉が分からない。

想像してみて欲しい。
子供用プールで、お父さんが小さな子供を腕の中に抱えながら浮かせて泳がせてやってる姿を。
まさしくあんな図。

「もう、なんやねんな!ほやからそんなにくっついてこんでも、あたしは泳げるねんて!」
「過保護かっ!」

すーちんはどうしてるのかと目をやると、インストラクターと二人「綺麗~。」とか言いながら、優雅に泳いでる。

「そうそう、あれがしたいの。」
「な、あんたがくっついてると、あたし泳げへんやん。」

けど、現地の言葉が分からない。
なんか、クセ毛インストラクターとくっついたり、離れようともがいたりしているうちに、急にギュッと後ろから抱きしめられ
『ビクビクッ!』とクセ毛インストラクターが痙攣した。

「ええっっ!大丈夫?」
「何?どうしたん?引きつけ起こしたん?」

どこまでもおぼこいあたしは本気でクセ毛インストラクターの心配をした。

なのに、奴はなんだかやけに呆けたような顔をして、あたしの顔を見てニッコリ微笑んだ。

「なんや、大丈夫なんかいな。心配すんがな。」
と、その一瞬は思った。

でも、なんとなく自分の腰の辺りに手をやると…。

「え~💦なんかヌルヌルしてるんですけどぉ~💦」

お気に入りのワンショルダーの赤のワンピース水着は、ヌルヌルっになってしまった💢。

そこまで来てようやく、おぼろげに
「これはもしかしてあの、例の、なんちゅーか、コイツ俗に言う〝発射した〟ちゆーことちゃうんか???」
と、思い至ったあたくし。


もう、ホンマに…。
おぼこいにも程がある。
今日び、中学生でもこれがどういう事か分かってるで。
何で分からへんかったん?って。
ほんなん、これ以上ないいうくらいの透明な海で、抱きしめられて発射されるって、海へダイブする前に1ミリでも想像する?
せーへんやろ!

う~~、タイムマシンがあったら、海へダイブする前のあたしに言ってやりたい。

『何でもいいから離れろ!数分後、そいつは発射する!』

時間が来てボートに戻る前に、海水で必死に水着のヌルヌルを手で洗い落とし、ボートに乗り込んだ。
全く、綺麗な海が台無しや。
ドクターフィッシュが寄って来たらどーしてくれるねん。
ボートの中ですーちんは、どんだけシュノーケリングが楽しかったか、嬉々として喋り続けた。 
その楽しい気持ちに水を差すようで、あたしは自分の身に起きた事をすーちんに切り出せなかった。

クセ毛インストラクターはとってもご機嫌。
ほら、ほやろ。
バリ島には居ないタイプの色白むっちむっちの若い子相手にスッキリしたんやもんな。
っちゅーか、お前、安すぎるやろ!
別に胸を触られた訳でも、お尻を撫でられた訳でもないねんもん。
なんとなーく、くっついてるだけでさ。
どんだけ溜まっててん!
(はっ、御下劣な言葉を使ってしまったわ。あたくしとした事が。)

アーッッ!!
今書いてて気が付いたっ!
肌色のパンツってこの為?
水着やと発射しにくいから?
なあ、なあー?

遥か昔過ぎて確かめようがない。
テレビで時々温泉中継で、男性アナウンサーとかが、肌色の水着着てる時があるけど、あれ見る度にクセ毛インストラクターの呆けたような顔が浮かんで腹が立つ。

今もしおんなじ事されたら、
「何してんねんっ!」
って、肘鉄一発食らわせて、透明な海に軽く沈めてやるのに。
あたしと背ほんなに変わらへんかったで。
木﨑君くらいの小っちゃい奴やったもん。

この事をホテルの部屋に帰ってから、やっとすーちんに話した。
おぼこさではあたしとどっこいどっこいのすーちんに
「え?海の中で痙攣しやったん?足つらったん?」と言われた時には、ほやからあたしら仲良く出来てるんやわとしみじみ思ったわ。

旅行から帰って、この事を当時よくつるんでた男友達に話したら、お腹抱えて笑われて、あたしとすーちんにそれがどういう事か、事細かく解説してくれた。

そして聞き終わったすーちんに、ものすごいゆっくりと
「真理ちゃん、なんか可哀想…。なんか男運ないね…。」と言われた。

あのな、すーちん。
男運ない言う程あたし濃い恋愛、この時点でしてないねん。
あんなクセ毛インストラクターの発射一つで、男運ない決められたらたまらんわ。

あれから約30年。
今振り返るに、すーちんのあの言葉は当たらずとも遠からずってとこですわ。

えー、ただ今12月27日 22:20分。

明日は稲ちゃんの生誕34周年。

あ、という事は、今日木﨑君の誕生日や。
確か一日違いってトークショーで言ってた。

木﨑君、何歳になってんやろ?
ま、別にそれはどーでもええわ。

話が逸れた。

稲ちゃん、一日早いけど
「誕生日おめでとー!」

来年はもうブスイジりのネタから離れても大丈夫じゃね?

アニキと二人、新しいアインシュタインを見せてね!!
ほなっ!