疲労困憊

はぁ………。
疲れたぁ…。

なんとかなんとか稲刈り終わった。
「しんどい。」

もう一回言う。
「しんどい。」

秋の詩の稲刈り。
元々ぬかるみの酷い田んぼなのに、水を落とすのが遅くて、真ん中辺りは乾いていたけど、上の田んぼとの境の畔際はまだ水が漬いていた。

何トンもあるコンバインでは近付けないので、ぬかんでいる所は手で刈る。

朝８時から手刈りを始めて、９時からコンバインで刈り始めた。

刈り始めてすぐ「ゴッゴッゴ…。」となんか変な音がする。
スピードを上げて刈ると稲藁を送る途中で詰まってしまう。

稲藁を送るチェーンから藁切り用刃に移る部分で、藁がどんどん溜まって食い込んでしまう。

脱穀用胴の上の重い重いハッチを持ち上げて、チェーンに絡まって食い込んでいる藁を引っ張って抜き取る。

仕切り直して10メートル程動くとまた詰まってしまう。

ハァ～⤵️もうっ💢
全然進まへん。
もう１１時回ってる。
なんとか必死に対処してたけど、もう限界。
三菱農機にSOS の電話。

今の修理現場が終わり次第来てくれるとの事。
この間にお昼ご飯済ませておこう。

ササッとご飯済ませて、田んぼに戻ると、丁度三菱農機が直してくれていた。

「どうなってました？」
「藁切り用の刃を動かすベルトが切れてたんで交換させてもらいました。」
「ええっ！」

ベルトが切れてたんかい。
そら、なんぼゆっくり刈ろうが、詰まった藁取り除こうが動かんわ。

ベルトを取り替えてもらったら、スムーズに刈れる様になった。

三菱農機さん、ありがとう。
もうホンマに神。

けど、この修理代一体いくらかかるんやろう…。
考えんとこ。

刈り取った籾を、軽トラに積んでるホッパーに空ける。

ハァ～、もう１時やのに、まだ２回目や…。
力なくペットボトルの水を飲む。

「サラサラサラサラ…。」

うん？サラサラサラサラ…。
うん？
軽トラに目を戻す。

「あーッ！」
こぼれてるやんっ！
籾こぼれてるやんっ！

ホッパーは乾燥機を使わせてもらってる元鉄工所勤務のY さんの手作り。
籾が一杯になったらクレーンでホッパーの前部を吊り上げ、後部の蓋が開いて乾燥機に籾が流れて行く仕組み。

そのホッパーの蓋を別添えのネジで締めるんやけど、どうやら締め具合が甘くて、一杯になった籾が重みで隙間からこぼれ落ちてるのだっ！

コンバインから飛び降りて蓋を押さえに行く。
でもサラサラサラサラこぼれ落ちる籾が挟まって閉まらない。
地面にどんどん溜まって行く籾。
何かに受けなきゃ。
けど、この蓋を押さえてる手を離したら全開になるかも。
どうしよう、どうしたらいい？
くぅ～。

大人になって何年振りかに「神様助けて。」言うて泣いたわ。

泣いてる場合ちゃう。
思い切り蓋を押し込んで、ダッシュで家に帰ってポリバケツを取りに帰る。
ポリバケツを取って来たのはいい。
サラサラサラサラ、ポリバケツに籾が溜まって行く。
けど、どうしても蓋が蓋が閉まらんっ💦
ポリバケツ３杯分くらいの籾がこぼれ落ちて、ようやくネジが締まった。

「あ～もぉ～💦」

ぐったり…。

徒労感が凄い。
も～何やってんねんろ、あたし。

でも稲刈りはまだまだ残ってる。　
下手したら今日中に終わらないかもしれない。
とりあえず後で回収する事にして、稲刈り、稲刈り。

ぬかるんだ田んぼの稲は、根本が水分を含んでて倒れやすい。
あ～、なんでもっと早く水を落としとかへんかったんやろ…。
後悔先に立たず。

敬老の日で、老人会の催し物に行っていたお母さんが帰って来て、手伝ってくれた。

コンバインのキャタピラーは、湿地帯で演習でもしたんかっちゅーくらいドロドロ。
先に刈っておいた稲を手漕ぎで脱穀するのに、足を取られてコケそうになる。

でも、無茶苦茶時間はかかったけど、ようやく稲刈り完了。
５時を回ってる。
スムーズにいけば、３時間で終わる田んぼやのに、丸一日かかった。

乾燥機を借りてるY さんの小屋を掃除して、コンバインで家の小屋に帰って来る時に、集落の生活道路に落としてしまった泥まみれの稲藁をちり取りで回収してまわる。

ここまでしてようやく全て完了。
６時回ってる。
うっすら暗くなり始めた。
その間に両肩をブトに喰われる。
痒っ💦
ブトの威力は強烈。
シュガーラッシュのラルフみたいな肩に膨れ上がる。

もうなんでもええわ。
終わった。
とりあえず終わった…。

もう精神的に疲れまくって何もしたくない。
お風呂で汗と汚れを落として、ヘロヘロになって死んだマグロみたいに横たわる。

『疲労困憊』って、今のあたしの状態を表す為にこの世に生まれた四文字熟語やわ、きっと。

けど、台風被害でせっかく育てて来たお米の収穫を諦めないといけない農家さんが一杯居る。

文句なんか言ったらバチが当たる。

ありがとうございます、神様。
ありがとうございます、ご先祖様。
今年も無事に稲刈りさせて頂きました。

あたしは、あたしは…
もう寝ます。