当たり前で無い日常。
🎤 晴れ渡る日も雨の日も
🎤 浮かぶあの笑顔
🎤 思い出遠くあせても
🎤 おもかげ探して
🎤 よみがえる日は 涙そうそう
夏川りみ / 涙そうそう
夕暮れ時に誰も居ない田んぼに居残っていると、少し心細い。
本当に一人きり。
あたしだけが世の中から取り残された様に思える。
そういう時、この歌を良く歌う。
森山良子さんが早世したお兄さんへの想いを歌ったこの曲。
お兄さんをあたしのお父さんに置き換えて、力一杯歌う。
歌う事に集中しているからなのか、大きな声を出しているからなのか、一人きりの心細さが少し薄らぐ。
昨日の雨が上がった後の今朝の空は、まだ薄暗い雲が低い所まで降りていた。
「見てるよ。」
「楽しみに待ってるよ。」
もっとちゃんと伝えれば良かった。
そんな事ばかり思ってた昨日はもう終わった。
とっくに陽は昇ってるはずなのにまだ薄暗いのが、今朝のあたしの気持ちには合っていると思った。
田植えを始める前。
聴いてる人なんて誰も居ないのに、いつもみたいに大きな声ではなくて、小さな声で一回だけ歌った。
お兄さんを川口君に置き換えて歌った。
歌い終わった時には「シャンとしよう。」そう思えてた。
言い尽くされて来た事だけど、当たり前の様に目が覚めて、当たり前の様にお腹がすいて、当たり前の様に笑える。
全部全部、決して当たり前では無いのだと、心を引き締めた。
田植えを無事迎えられた事に感謝して、「今年もどうぞよろしくお願いします。」そう声を掛けて準備に取り掛かる。
毎年の儀式。
でも、ちょっとだけ毎年と違う今年の儀式。
こんばんは。
ウル虎マリンです。
本日、キヌヒカリの田植え。
お母さんが腰が曲がって重い物持てなくなってからは、ほとんど一人で植えてたけれど、今年はお姉ちゃん達がまた手伝いに来てくれた。
苗箱の手渡し、方向転換した時に掘れてしまった地面の均し、空いた苗箱を集めて軽トラに積み込む作業。
自分一人でも勿論出来るけど、二人も補助が居てくれると、倍くらいスムーズに田植えが出来る。
小学生の頃、田植えするお父さんを手伝って、「あ~真理が手伝うてくれたさかい、早よ終わった。お前はよう間に合う奴や。」そう褒めてもらえるのが無茶苦茶嬉しくて、次は何をしたらいいか考えて、先回りして先回りして、動き回った事を思い出す。
田植えの手伝いは、厳しくて滅多に褒めてくれる事が無かったお父さんに褒めてもらえるチャンスだった。
無事に植え終わって、自然とお姉ちゃん達に、「ありがとうございました。お陰で無事終わりました。」と敬語で御礼を言っていた。
ちょうどお昼に植え終わって、家族4人でお昼ごはんを食べる。
子供の頃はあんなにお兄ちゃんが欲しかったのに、今となってはお姉ちゃんが居てくれて本当に良かったと思う。
同性の姉妹ならではの気遣いをしてくれる。
50歳を過ぎても、あたしはマイペースな末っ子のままだ。
お姉ちゃん達が帰って、植え終わった田んぼを見に行く。
すっかり晴れていた。
日暮れ。
田んぼの水を見に行く。
朝が来る。
また田んぼに足を運ぶ。
当たり前の当たり前で無い、あたしの日常。
川口君。
今日も一日が終わります。