母上とのオリンピック観戦記。
オリンピックが佳境である。
毎日オリンピアンの熱い戦いに、テレビの前から興奮しながら応援を送る日々。
あれだけ見ていたバラエティ番組も一切見ていない。
なんであんなに見てたんやろ?と思うくらい見ていない。
そして、普段バレーボールと高校野球以外のスポーツは一切見ない、もうすぐ85歳の誕生日を迎える母上も熱心に見ている。
そんな母上と並んで見ていると、「85年間ほとんど興味を示さずに生きて来るってこういう事なんか…。」とこれまた驚きの連続なんである。
例えば…。
バトミントンの女子ダブルスの試合を一通り見終わる頃に。
母上「これどうなったら点が入るねん?」
あたし「え?」
母上「羽根が下に着いたらアカンのか?」
あたし「ほうよ。下に着いてもアカンし、線から出てもアカンのよ。バレーボールと一緒よ。」
母上「ほうけ。」
もうすぐ試合が終わるのに、そこ分からんとなんで応援出来てるんだ。
西矢椛ちゃんが13歳にして、最年少金メダリストになった時も。
母上「この子ら学校も行かんと、こんなことしてやんのけ。」
あたし「学校は行ってやるがな。学校も行きながらやさかい、余計凄いねんやん。」
母上「こんなもん何が面白いえ?」
あたし「ほれは知らん。」
新しいものを受け入れる柔軟性なんて、潔い程に一切無い。
メダリストが試合後インタビューを受けてるのを見ながら。
母上「何で日本の子ばっかしインタビューしやるえ?」
あたし「うっ。ここは日本やさかいによ。」
母上「日本語で喋ってやったら外国では分からんやんけ。」
あたし「日本のテレビに流す為にインタビューしてやんねん。他の国はその国のテレビ局の人がインタビューして流してやんのよ。」
母上「ほうけ。」
橋本大輝選手の優勝後インタビューを聴き逃してしまったではないか。
卓球女子団体の試合を見てる時も。
エース、伊藤美誠ちゃん登場。
母上「この子誰え?」
あたし「伊藤美誠やん。」
母上「こんな子知らんわ。」
あたし「何で?この前散々石川佳純よりこの子の方が強いわ、言うてたやん。」
母上「ほうかいね。」
「……………。」
中国の牙城を崩すより、85歳母上の記憶を打ち抜く方が遥かに難しい。
85歳。
只今、真夏の大冒険中なんである。