幸せな日曜日

24日、久しぶりに司会をした。

司会っつっても、80人くらいの集まりの発表会みたいなんの司会なんで、そんな大したもんではないねんけど。

あたしはやたら度胸が良いので、それを知ってる人からちょこちょこ司会を頼まれる。
始まりは、遡れば小学校の謝恩会の司会で、やたらウケて担任の先生に凄い誉めてもらえた。
思えばあれが人前で何か喋る快感を覚えたきっかけかもしれない。

学生時代は中学、高校での文化祭のクラスの出し物のMC。
社会人になってからは披露宴の司会もしたな。
今と違って田舎の披露宴は、多ければ100人弱の列席者が居る。
ちゃんと仲人も立てるし、親族の人数が一番多いので、披露宴で言ってはいけない禁止文句みたいなのも結構ある。
例えば〝割れる〟〝離れる〟みたいな離婚を想像させる言葉とか。
でも結婚式場のプロの司会を頼むより安く済むし、あまり堅苦しくしたくない友達には重宝がられた。
もうでも二十代の話。
あたし達の時代は二十代でお嫁に行くのが当たり前だったので、30過ぎても40過ぎても嫁に行かん女に司会の依頼はない。
なんか、縁起悪いもん。

町議会選挙のウグイス嬢も4回やった。
ちなみに4戦4勝!
ウグイス嬢にとって、これ凄い大事。
あたしは気にしてなかったけど、やっぱり選挙に打って出る立候補者と、後援会の人達にとっては験担ぎの意味で大きい事のようだった。
ま、選挙はウグイス嬢の力なんて微々たるもの。
要は立候補者の知名度が一番大きい。
ただ田舎の町議会選挙では、限られた地域をそれこそ隈無く回って、のぼり立てて歩いて回るなんて事もよくあるので、同じ事ばっかり言ってられない。
公示日当日は「〇〇が立候補のご挨拶に伺いました。」に始まり、最終日はそれこそ泣き落としみたいな事もする。
あたしは泣き落としが余り好きではなかったけど、候補者や後援会の人がそういう傾向なら、汲み取って浪花節でやっていた。
でも今はどうだか知らないけど、あたしがウグイス嬢やってた三十代の時は、とにかく後援会とその家族は大変なのよ。
毎日交代で在所の人が手伝いに来てくれるので、その人達へのお昼ご飯と夜ご飯を、近所の人や親戚も巻き込んで用意する。
夜はそれこそ酒宴になる。
ただ単にお酒が飲みたいだけの酒飲みの在所のおっさんもくれば、隅っこでは明日は何処を回ってどういう体制で行こうか、作戦会議してる選挙陣営中枢部が居たり。
温度差があって、ちょっとした喧嘩みたいな事が起きたりもする。
そういう濃い約一週間を一緒に過ごすので、裏方の皆さんのご苦労を労う気持ちで喋ると、最終日になるとフツーに泣けるのだ。
そんな演技しなくても。
県議会選挙とか市長選挙とかと違って、規模が小さい分、人と人の繋がりが密接なので、終わったらドッと疲れる。
もう頼まれても断るな。
冬場は寒くて地獄やし。

一度、楽天則本昂大投手の地元、多賀町の町議会選挙のウグイス嬢した時は面白かった。
こんな山奥に人住んでる?みたいな、あのテレビでやってるポツンと一軒家のロケか、思うような山道を行くのだ。
「ハンドル捌き間違ったら崖に落ちるやん💦」
「運転手さん、頼むで!あたしらの命はあんたにかかってるねん!」
と、ガタガタ揺れる車の後部座席で窓にしがみつきながら念じる。
下手くそな運転手やと、「ちょっと運転代われっ!」とハンドル奪い取りたいくらいやけど、ウグイス嬢なんでそんな事も出来ない。
途中でそれこそ猿に出会ったりもする。
川の水って本来はこんな色なんや!と驚嘆するくらいの透明を超えて、宝石のアクアマリンみたいな色の芹川の上流。
綺麗やったなぁ~。
そんな山奥に人は住んでるのよ!
3軒とかやけど。
それでも行くねん。
そういう所まで足を運ぶってのが、町議会選挙では凄い大事。
と、後援会の人が言ってた。

司会に話を戻すと、あたしは人数が多ければ多い程緊張しない。
と言っても一番多い時で800人くらいやけど。
一番大きいハコで、近江八幡文化会館のキャパ1130人かな?
プロの司会ではないので、多少間違えても仕方がないくらいに割り切ってるし、あたしを52年支えてるのは根拠のない自信なので、
〝なんとでも出来るし、なんとでもなる〟くらいに思ってる。
人数が多いと、最初の第一声までは少し緊張するけど、進行していくと『これだけの人があたしを見ている』快感が勝つ。
根っからの出たがりなのよ、あたくし。
でも逆に10人くらいの小規模やと、一人一人の息遣いまで分かるので、
「あ、あの人興味失ってる。」とか
「あ、腕時計見た。」とか色々目に入ってしんどいのだ。
この、『人数多ければ多い程緊張しない。』を、今まで色んな人に話しても全然共感してもらえなくて、なんで分からへんねんろと思ってたら、アインシュタインの相対性ラジオのゲストに来てたジュリエッタのどっちやったっけ?どっちかが言ってて、「やっと分かってくれる人が居た!」とちょっと興奮した。

ちなみに芸人さんは、漫才する時お客さんの年齢層が高いと笑いが重いので難しいという話をよくするけど、あたしは司会する時、客層が年齢層高い方が圧倒的にやりやすい。
お年寄りというのは、自分の目の前にマイク持った人が立つと、その人の目を見て話を聞こうとする基本姿勢がちゃんと出来ている。
だからあたしの話にうなずいてくれたり、手を叩いて喜んでくれたり、反応がものすごい素直なので、喋っててこちらも楽しいし、なんか嬉しくなるのだ。
あたしお年寄り転がすの上手いよぉ~。
お年寄りというのは、毒蝮三太夫さんやないけど、年寄りイジりをかなり喜んでくれる。
しかもあたし自身が50歳過ぎて、段々年取って来て皆さんの苦労が分かるようになりました。みたいなエピソードを話すと、目をキラキラさせて喜んでくれるのだ。
お年寄りは本当に可愛い。
24日の司会は、詩吟や大正琴や舞の発表会みたいな進行役やった。
なんせ素人さんの集まりなので、設営も段取りも穴だらけ。
次の出番の人がまだ衣裳に着替えてなかったり、カセットテープを流すデッキの使い方が分かってなかったり、テープがどれか分からへんからあんた見て!とか。
もうハチャメチャ。(笑)
マイク持ちながら「これこれ。これ入れなおばあちゃん。空ではなんぼボタン押しても鳴らへんよ。」
みたいな話でイジり倒して場を繋ぐ。
こういう時、お年寄りは手を叩いて笑ってくれるからいい。
これが若い子やと、つまらないとすぐスマホをイジるし、ダラ~とした態度で、周りをどんどん重くするので、こっちもなんとかあの子の注意をこっちに向けさそうと変な力が入ってしんどい。
若者よ、目の前にマイク持った人が立ったら、せめて顔をこちらに向けなさい。
ま、そういう訓練が出来てないので仕方ないのだけど。

そんなこんなで、10時から14時くらいまで司会して、あたしも一緒になって大笑いした。
一生懸命なお年寄りほど可愛いものはない。
88歳のおばあちゃんが85歳から始めたドラム演奏を披露したりするのだ!
シンバルが揺れてるのか、手が揺れてるのか、どっちか分からんような演奏であっても、あのエネルギーは素晴らしかった。
ちょっと泣けた。

お昼間はお年寄りからパワーもらって、夜はラブとら芸人さんから幸せな時間もらって、24日はここ最近中で一番充実した日曜日だった。

あとは阪神タイガースが開幕ダッシュしてくれたら言うことなしっ!

果たして、二番福の効力はあるのかないのか。
オリックスが開幕ダッシュしたら、あるのかもよ。

な、伊丹君。