「あんた、どれがいい?」

あ~、忙しがっだぁ″~。
足、パンパン。

レンタル屋あるあるで、台風の前と選挙の前は、むっちゃ忙しいのだ。
オマケにお盆ど真ん中。
この5年くらいで、一番忙しかった。

今の場所に移転新装開店する前は、前身が個人商店だったので、お店も小さかったし、来店するお客さんの数もずっと少なかった。。
しかも扱ってる商品のラインナップが独特で、やたらアダルト雑誌の種類が豊富で、多分湖東地域だけでなく、近江八幡市と合わせても一番扱ってるアダルト雑誌は多かったと思う。

そのアダルト雑誌目当てに色んなお客さんが寄って来る。

毎日毎日、オープンと同時に流れ込んで来て、ほぼ半日くらい立ち読みするお客さん。
そのお客さんの間を縫って、その日入荷した雑誌を出して行く。

無茶苦茶の種類の冊数が入るのに、陳列出来るスペースは限られている。
どの雑誌を引いて返本するのか、どれを減らして場所を空けるのか、毎日頭を悩ませながら、雑誌を出していた。

立ち読みしているお客さんは、ほとんどがちょっと気まずそうにしていて、雑誌出ししているあたし達スタッフの事は無視している。

でも時々居るのだ。
調子に乗って、いらん事言って来る輩が。

ちょこちょこあるのが、
「どれが一番人気(の雑誌)や?」
これは別に純粋に雑誌を買う時の参考にするつもりと言われれば、セクハラとも言えないし、無難に答えておく。

たまにあるのが
「あんたらもこういうなん、見るんか?」
もうこれはセクハラかどうかのラインで分けるなら、完璧セクハラ発言である。
「おっさん、アウトぉー!」
っちゅーやつ。

でも、あたしは忙しいのだ。
まともに相手するのも面倒くさい。
そういう時あたしは「見ませんっ!」と、喰い気味に答えてすぐ作業に戻る。

そして、一番面倒くさかったのが、色んな男女が組んずほぐれつしているエグい写真がバーンと載った雑誌を見せて来て、「あんた、こん中やったらどれが一番好きや?」と聞いて来たおっさん。

こういう時、セオリーではその場を離れて店長に報告に行かなければならない。
「あのお客さんにこれこれこういう事を言われました。」と。
そして、店長からお客さんに注意してもらう。
他のスタッフとも、あのお客さんは要注意人物だと情報共有して、買い物に来ている女性客に変な事したりしないか、注意を払わなければならない。

でも、あたしは忙しいのだ。
エッチな雑誌を見て、ヘンなテンションが上がってしまったおっさんの相手をしている暇は無い。

おっさんが差し出した雑誌を一瞥して、テキトーに一点を指差し
「コレ。」と答えておいた。

こういう時、「キャーッ」とか、「あの…、こ、困ります。」とか答えると調子に乗るのだ、こういうおっさんは。
バシッとビシッと毅然と答えると、
「えっ?」と言って固まるか、「何やねんこの女…。」と、後ずさりするか何処かに行くのだ。

事実この時も、あんまり意表を突いた答えだったのか、無言のままあたしの顔をじっと見ていた。

「お買い上げですか?ありがとうございます。レジはあちらです。」
畳み掛けたら、本当にレジに行った。

「毎度ありっ!」

書店で働く女性スタッフさん。

今冷静に振り返ると、あたし無茶苦茶やがなと思う。
もっと、イヤラシイ質問をされてもおかしくなかった。
なので、オススメは致しません。

店長に報告に行って下さい。
ぜひ。