ありがとう。メッセンジャー。
今シーズンの戦いをあと2試合とした今日の中日戦。
週末は雨との予報を覆して、青空の見える甲子園。
ランディ・メッセンジャーの引退試合。
勿論、先発はメッセンジャー。
1イニング投げるのかと思ってたら、先頭打者の大島を空振り三振に打ち取った所で交代となった。
沸き上がる拍手。
マウンドに内野陣が集まる。
矢野監督が直接交代を告げに行く。
チームメイトと熱い抱擁を交わすメッセンジャー。
矢野監督とも通訳さんとも抱き合った。
立ち上がる甲子園を埋め尽くす満員の阪神ファン。
メッセンジャーは少し噛み締める様に、そして少し自分に納得させる様に、帽子を取って両手を挙げた。
ベンチに向かって歩き出すメッセンジャー。
花束を持った鳥谷が迎える。
グランドでは決して見せる事の無い、本当に嬉しそうな弾けるような笑顔で
「こっち来いよ!」とジェスチャーでメッセンジャーを呼ぶ。
がっちり讃え合う様に抱き合う二人。
共にタイガースを去る二人の少し長い抱擁。
ユニフォームを着た二人を見るのは、明日が最期になるかもしれない。
勝って勝って、一日でも長く二人のユニフォーム姿を見たい。
野手陣を言葉では無く、文字通り背中で引っ張ってくれた鳥谷。
外国人投手陣のサポート役を買って出て、微に入り細に入り色んなフォローをしてくれたメッセンジャー。
二人が何か言葉を交わしている。
短いけれど、多分それで充分。
今年メッセンジャーは外国人選手として9人目となる国内FA権を取得し、日本人扱いとしてプレーした。
〝日本人扱い〟って言葉が失礼な程、誰よりも大和魂を持った投手だった。
引退会見の時、メッセンジャーは今年の事を「Now year」と言った。
あれは、すまたんの川藤さんとのインタビューの中で、英語が喋れない川藤さんが、今年の事を川藤節でいつも「Now year」と表現していたからだ。
本当は「This year」が正しいのに、いつもいつも「Now year」と言ってしまう川藤さんを面白がり、尊敬していたからこその「Now year」だった。
そんな気遣いが出来て、ユーモアがあって、優しいメッセンジャーが大好きだった。
あたしは大男が大の苦手だけど、メッセンジャーは別。
昨日の試合前。
メッセンジャーTシャツを着たナインと記念撮影に収まったメッセンジャーは一際大きかった。
プロ野球選手に混じっても頭一つ飛び抜けていた。
その大きな身体に、ひさしの部分を曲げずに真っ直ぐにしたままの帽子を乗せて、真剣にそして楽しそうにボールを投げ込むメッセンジャー。
今年終盤、治療の為にアメリカに一時帰国した時は、このまま退団の流れになるかと心配した。
でも、メッセンジャーは帰って来てくれた。
ただ元の様に投げられる身体を手に入れる事は出来なかったけれど。
日本人登録で臨んだ今シーズン。
並々ならぬ覚悟があっただろう。
なのに不調が続き、投げても投げても勝ちが付かない今シーズンは苦しみの連続だったに違いない。
引退セレモニーでベネッサ夫人を讃え、阪神ファンに自分と同じように夫人の事も讃えてあげて欲しいと挨拶したメッセンジャー。
こんなにも気配りが出来る素晴らしい投手が10年間、阪神タイガースの投手陣を支えて来てくれた事への感謝の気持ちが込み上げて来て、拭っても拭ってもポロポロポロポロ涙がこぼれて仕方なかった。
また絶対、投手コーチとして帰って来て欲しい。
ありがとう、メッセンジャー。
ありがとう。
お疲れ様でした。